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「わあっ!!」
直之と菫が来たことに驚きを隠せない巧は、左手で枕を掴み顔を隠すような仕草をした。
「なんだ――元気そうじゃねぇか。良かった」
ベッド横に置いてある椅子に、腰を下ろした直之。菫は立ちすくんだまま、かける言葉を探すように室内を見渡していた。
――立派な個室。ミニキッチンやクローゼット、テレビも一体何インチだ……ドラマで見るような個室に入院だなんて、コウってやっぱり凄い人だったんだ。
枕から目だけを覗かせた巧は、菫と直之の顔を交互に数回見た。
「――責めないんっすか、俺の事」
直之が両腕を組み、フッと小さく笑った。
「バーカ、お前もそれを覚悟の上こんな事をしたんだろ?それに、もうそれ所じゃねぇよ。で、容体は?骨やっちまったのか?」
「そうなんすよー。両脚と右手やっちゃったので3ヵ月くらい入院になるみたいっす……まぁ、頭とか他は異常ないみたいなんで良かったですけど。先生にも奇跡の男って言われましたよ、はっはっうっ……笑うと痛ぇ……」
「ったく……全く、無理すんなっていつも言ってんのに……」
「すみません直之さん、迷惑かけて……あと1ヵ月働かせてもらう予定だったのに」
「いや、俺の方はいいけどさ。巧の本業の方にも支障出るんじゃねぇか?さっき、出版社の人も――」
「わーー!!直之さん待って待って!!!あーーっ、いでででで!!」
菫が本業の事を既に聞いているとも知らず、焦った表情をして声を荒げた巧。痛々しさが伝わってくる包帯の巻かれた右手を見た菫は、真剣な表情で直之の隣にある椅子に座った。
「ごめん、全部聞いちゃったよ」
菫の言葉を聞いた巧は、うなだれるようにベッドへ寄りかかり、直之の方へ鋭い視線を向けた。
「直之さーん……何で言っちゃうんすかー!!」
「いや、別に良いだろ。凄い事だし、もう知ってるもんだと思ってたし」
巧は唇を尖らせながら、ふうっと深い息を吐いた。
「もう直之さん――罰として、俺の着替え取って来て下さいよ!!」
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