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「コウくーーん!コウくん、コウくん!!」
昼間の出来事を彷彿させる、階段からバタバタ駆け下りてくる足音が事務所に響き渡った。
「社長、名前は一度呼ばれれば分かります」
「やっだーー、冷たーい!!ご機嫌ナナメ?」
宗則は、巧の頬をツンっと突いた。
「うわっ……で、用は何ですか?」
「あ、そうそう。菫ちゃんが、今日は病院の方たちと食事に行く事になったから、私が代わりに図面確認する事になったの。だから、私にメールを送って頂戴!」
巧は、眉をしかめて唇を尖らせた。
「――分かりました。直ぐに送ります」
「悪いわねぇー!じゃ、よろしくねーー!」
再び宗則の足音が響き渡る中、巧は両手を天井へ向けて伸ばして大きな溜め息をついた。
「――これだから、行かせたくねぇんだよ」
有線に掻き消される小さな声で、ボソッと呟いた巧。
既に菫へ送ったメールを選択し、転送ボタンを押す。宛先を宗則に選択し、定型文を適当に記入して送信。
メールを閉じた巧は再び溜め息をつき、髪をクシャッと掻き上げた。
「マチネの終わりに――返して貰ってねぇんだけど」
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