Act.1 追跡

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「もう死んでるとか?」 「有り得なくはないわね。アルブムでも捜してるんだけど……失踪直後の彼の足取りを追ってて、行き当たった一人が、彼女よ」  カチッという音を立てて、エルフリーデがマウスを操作すると、ウィンドウが切り替わる。あの少女の顔写真と、履歴を纏めたであろうレポートがディスプレイされた。 「ティアナ=マリーナ=フェルステル、二一九九年五月十八日生まれ――か」 「彼女が、義眼移植手術を受けた病院で確認したら、彼女は生後の月齢検診で全盲らしいっていうのが分かったそうなの。両親としては、何とか彼女の目に光をもたらしてやりたかった。移植手術を受けたのが二歳の時なんだけど、その手術を受け持ったスタッフの中に、ドクトル・リシュバンがいるのよ」 「まさか、本名で参加してたのか?」 「勿論、偽名。だけど、顔写真を照合したら、バッチリ一致したわ」 「ふぅん。で、そのあとのそれぞれの足取りは?」 「リシュバンのほうは、以後も時々、世界各国の病院に現れては消えてる。大体その前後、義眼手術が行われてるんだけど、各病院で全部違う偽名を名乗ってるから、把握し切れてない部分もあると思う。義眼手術全てに関わってる訳じゃないし、調べたら本当にフツーの義眼を移植されてたって患者も少なくないわ」 「義眼それぞれに発現する能力、みたいなのは分かってないのか」 「ティアナに関しては、推測だけど結論は一応出てるよ」  エルフリーデは、画面をスクロールしながら続ける。 「彼女が移植されたのは、ゴッド・アイの製造ナンバー・4。二歳で義眼移植手術を受けたあと、どの時点で能力が出現したのかは不明。でも、七歳の時、小学校でクラスメイトに集団暴行を受けて、自衛の為に能力を発動させたらしいの。動転した担任の女性教師が、アルブムの過激組織に連絡を取って、一時は警察や、特殊部隊が出動する騒ぎになったようよ」 「それって、どこであった話?」 「イギリスのコッツウォルズ地方ね。結局その時は、経緯はよく分からないけど、イギリス政府のアートルム組織が、彼女を収容したって話なの。そのあと、すぐにティアナは政府組織を離れて、両親共々、一度消息を絶ってる。彼女の行方は、アルブムも捜索してたんだけど、アルブムは何分(なにぶん)政府所属の組織が少ないから、いつも後手に回るのよね。次に彼女に接触したのは、やっぱりアートルムが先で……」
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