Act.1 追跡

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「もしかして、それが七年前のコトか?」 「そう」 「じゃあ、今回ティアナが見つかった原因は何なんだ?」  眉根を寄せて、セシルはエルフリーデを覗き込む。彼女の手の中のマウスが、また一つ音を立て、ディスプレイを変えた。 「これよ」  画面に映っているのは、インターネット上のニュースのようだ。  日付は、今年の七月二十九日――つまり、三日前のものだった。  とあるデパートから、飲料水と食べ物が何日か分、一度に忽然と消えた、と書いてある。それに目を通したと判断したのか、エルフリーデはセシルにマウスを譲った。自分でスクロールしろという意味だろう。  マウスを受け取って、セシルは次の記事に移った。  これも、三日前の記事だ。  一時的に、集合住宅の水道の出が悪くなったという事件だ。そして、次の記事には、やはり某デパートのタオル売場から、バスタオルがなくなったと書かれている。  全て、ドイツのミュンヘンにある街での事件らしい。 「……これが何」 「ティアナが能力を使った痕跡よ。まあ、足跡みたいなモノね」 「どういう意味だよ」 「彼女はどうも、口に出したコトを具現化する能力があるらしいの。正確には、それが彼女の移植されたゴッド・アイの力」 「で、このちっこい事件が何で足跡になるんだよ」 「例えば、『食べ物が欲しい』って言ったとするでしょ? そうすると、彼女の手の上に、食べ物が現れる。でも、その食べ物は、魔法で出て来た訳じゃない。どこかから、彼女の手の中に強引に引っ張り出されるの。どこから取ってくるかは、彼女の意思とは関係ないし、多分彼女自身、そのコトは知らないんじゃないかな」  セシルは、ピクリと眉尻を跳ね上げた。 「……つまり、それは無から有を生み出す能力(ちから)じゃねぇってコトか?」 「正解、よくできました」  パンパン、とおざなりに手を叩くエルフリーデに、セシルはやや苛立った口調で問いを重ねる。 「じゃあ、最初の――彼女が七歳の時の事件は? 集団暴行を受けて、自衛の為に能力を発現させたって言ったよな」
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