13人が本棚に入れています
本棚に追加
「もしかして、それが七年前のコトか?」
「そう」
「じゃあ、今回ティアナが見つかった原因は何なんだ?」
眉根を寄せて、セシルはエルフリーデを覗き込む。彼女の手の中のマウスが、また一つ音を立て、ディスプレイを変えた。
「これよ」
画面に映っているのは、インターネット上のニュースのようだ。
日付は、今年の七月二十九日――つまり、三日前のものだった。
とあるデパートから、飲料水と食べ物が何日か分、一度に忽然と消えた、と書いてある。それに目を通したと判断したのか、エルフリーデはセシルにマウスを譲った。自分でスクロールしろという意味だろう。
マウスを受け取って、セシルは次の記事に移った。
これも、三日前の記事だ。
一時的に、集合住宅の水道の出が悪くなったという事件だ。そして、次の記事には、やはり某デパートのタオル売場から、バスタオルがなくなったと書かれている。
全て、ドイツのミュンヘンにある街での事件らしい。
「……これが何」
「ティアナが能力を使った痕跡よ。まあ、足跡みたいなモノね」
「どういう意味だよ」
「彼女はどうも、口に出したコトを具現化する能力があるらしいの。正確には、それが彼女の移植されたゴッド・アイの力」
「で、このちっこい事件が何で足跡になるんだよ」
「例えば、『食べ物が欲しい』って言ったとするでしょ? そうすると、彼女の手の上に、食べ物が現れる。でも、その食べ物は、魔法で出て来た訳じゃない。どこかから、彼女の手の中に強引に引っ張り出されるの。どこから取ってくるかは、彼女の意思とは関係ないし、多分彼女自身、そのコトは知らないんじゃないかな」
セシルは、ピクリと眉尻を跳ね上げた。
「……つまり、それは無から有を生み出す能力じゃねぇってコトか?」
「正解、よくできました」
パンパン、とおざなりに手を叩くエルフリーデに、セシルはやや苛立った口調で問いを重ねる。
「じゃあ、最初の――彼女が七歳の時の事件は? 集団暴行を受けて、自衛の為に能力を発現させたって言ったよな」
最初のコメントを投稿しよう!