13人が本棚に入れています
本棚に追加
ティアナは、被害者だ。寄ってたかって袋叩きにされたから、身を守っただけだ。だのになぜ、こんな扱いを受けなくてはならないのだろう。
“もしもし、アルブムの事務所ですか? ええ、今、ヴァッフェ・エルベがいるんです、ここに! すぐに、すぐに始末をお願いします!”
“始末?”
その言葉を聞いたティアナは、ますます戸惑った。
始末とは、何だろう。そもそも、自分はヴァッフェ・エルベなどではない。
七歳のティアナの理解力では、それ以上を想像することもできなかった。
通信を切った教諭は、ティアナに険しい視線を向けながら、他の児童に『皆、外に出なさい! 早く避難するの!』と叫んだ。
“何を言ってるの? 何をするつもりなの?”
ティアナは立ち上がると、教諭に駆け寄る。
“来るな、化け物!”
威嚇するような口調の言葉に、ティアナはビクリと身体を震わせた。自然、足は止まる。
“……化け物って何? あたしのこと?”
“あっちへ行って! いいえ、この教室の中にいるの! すぐに駆除の人が来るからそれまでじっとしてるの!”
“くじょ? くじょって何?”
“動くんじゃないの!”
女性教諭は、金切り声で叫ぶと、ティアナにあろうことか銃を突きつけた。
“動かないで、動いたら撃つわ、本気よ”
“いや……!”
銃口を向けられた幼い少女は、身を守ることしか考えられなかった。
“いやだ、助けて! お父さん、お母さぁ――――ん!!”
「――――いやぁああ!!」
はあはあ、と弾む呼吸音が耳に反響する。
目の前は、薄明るかった。
「ッ、あ……?」
ティアナは、肩で息をしながら周囲を見回す。
天蓋付きのベッドには、カーテンは付いていない。室内は、豪奢な部屋だったことだけは伺えるが、荒れ放題だった。
窓ガラスは砕け、やはりカーテンは付いていないか、破れてしまっている。床やベッドに積もっていた誇りだけは、昨夜、休む前に簡単に掃除をしたが。
(……夢……)
はあ、と吐息を漏らして、俯く。
そうする内に、昨夜、たまたま見つけたこの廃墟に転がり込んだことを思い出した。
最初のコメントを投稿しよう!