Act.1 追跡

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 ティアナは、被害者だ。寄ってたかって袋叩きにされたから、身を守っただけだ。だのになぜ、こんな扱いを受けなくてはならないのだろう。 “もしもし、アルブムの事務所ですか? ええ、今、ヴァッフェ・エルベがいるんです、ここに! すぐに、すぐに始末をお願いします!” “始末?”  その言葉を聞いたティアナは、ますます戸惑った。  始末とは、何だろう。そもそも、自分はヴァッフェ・エルベなどではない。  七歳のティアナの理解力では、それ以上を想像することもできなかった。  通信を切った教諭は、ティアナに険しい視線を向けながら、他の児童に『皆、外に出なさい! 早く避難するの!』と叫んだ。 “何を言ってるの? 何をするつもりなの?”  ティアナは立ち上がると、教諭に駆け寄る。 “来るな、化け物!”  威嚇するような口調の言葉に、ティアナはビクリと身体を震わせた。自然、足は止まる。 “……化け物って何? あたしのこと?” “あっちへ行って! いいえ、この教室の中にいるの! すぐに駆除の人が来るからそれまでじっとしてるの!” “くじょ? くじょって何?” “動くんじゃないの!”  女性教諭は、金切り声で叫ぶと、ティアナにあろうことか銃を突きつけた。 “動かないで、動いたら撃つわ、本気よ” “いや……!”  銃口を向けられた幼い少女は、身を守ることしか考えられなかった。 “いやだ、助けて! お父さん、お母さぁ――――ん!!” 「――――いやぁああ!!」  はあはあ、と弾む呼吸音が耳に反響する。  目の前は、薄明るかった。 「ッ、あ……?」  ティアナは、肩で息をしながら周囲を見回す。  天蓋付きのベッドには、カーテンは付いていない。室内は、豪奢な部屋だったことだけは伺えるが、荒れ放題だった。  窓ガラスは砕け、やはりカーテンは付いていないか、破れてしまっている。床やベッドに積もっていた誇りだけは、昨夜、休む前に簡単に掃除をしたが。 (……夢……)  はあ、と吐息を漏らして、俯く。  そうする内に、昨夜、たまたま見つけたこの廃墟に転がり込んだことを思い出した。
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