Prologue

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 ちなみに、アートルムというのは、ヴァッフェ・エルベを研究し、量産しようという派閥のことだ。逆に、もうヴァッフェ・エルベを含む武器自体の開発をやめよう、という派閥がアルブムといい、国によっては時折、両派閥の抗争も起きている。 「だとしたら」  いたずら好きそうな少年たちの瞳が、幼い故の残酷さに煌めき、ティアナを見る。 「なあ、おまえさ。ちょっとやって見せろよ」 「な、何を」  やっと口を開いたティアナに、少年が「とぼけんなよ」と机に手を突いて、身を乗り出した。それに合わせて、ティアナは仰け反るように身体を引く。 「なんかこう、ヘンなコトができんだろ?」 「な、何もできない、よ」  ティアナは、小さな声で言って俯いた。  本当は違う。物心付いた頃から、ティアナは、普通の人間にはできない“あること”ができる。だが、それを人前で見せないようにと、ティアナは両親に堅く言われていた。 「バカだなー。なんにもないのに、できる訳ないだろ?」  助け船を出してくれたかに見えた別の少年に、最初に『何かやって見せろ』と言った少年が問い返した。 「どういう意味だよ」 「こういう時は、こうだ!」  言うなり、二番目に口を開いた少年は、ティアナを椅子ごと床へ突き倒した。
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