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正面には、大型の飛行機すら完全に空中分解させてしまう程の、凄まじく強力な上昇気流と下降気流とが常時内部に渦巻いている積乱雲。
下方には海。
中央左右後方そして上方には、F4Fワイルドキャット戦闘機合計20機。
そんな絶望的にも程がある状況の中、T-111号機は高度を上げながら迷わず真正面の積乱雲へと赤ブーストのまま突っ込んで行く。
何かの故障若しくは理由により、投棄したくとも其が出来ないでいる25番爆弾4発を抱えたままで。
どちらに転んでも九死ならば、例えほんの微かでも一生を掴み獲れる確率の高い側が良い…
其が積乱雲への突入を選択した理由なのだろうか?
その答えは、否。
たった1機でも十分に恐ろしい敵戦闘機から逃れられる為には、他に選択肢が見当たらなかったからなのだ。
此のまま超低空で逃げ続けたとしても、ワイルドキャットが引き返す前にT-111号機の燃料切れとなってしまったら…
日中戦役を生き残ったが故に自分達の運の強さにはそこそこ自信がある一式ペアだが、だからといって其に頼りきる程ジャクではないのだ。
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