零・始まり。

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 そんな一式ペアの事であるから、機長の決断に異を唱えなかったのは、勿論半ば運任せの大博打を打ったからではない。 佐伯空立原分隊で重ねた猛特訓のお陰で、大概の気流なら乗り越えてみせるという自信を持つ機長。 しかも幸いな事に、一式ペアの中には機長と同等若しくは同等以上の操縦技術を持つ副操がいるのだ。 この副操、兵下士官から見れば温室育ちに他ならない海軍飛行学生とは異なり、地獄とまで呼ばれる予科練で鍛え上げられた強者。 機長がヘマをしでかそうとしても、直ぐ様其に気付き若干の嫌味若しくは皮肉を伴いつつ、修正を要求してくる程上官への遠慮というものがない。 そして、空戦機動を繰り返したが故、そろそろ帰りの燃料が危うい筈だという、ワイルドキャットに対する機長の読み。 更に、このコースに不時着すれば、友軍に発見され救助される確率は低くないというペア総員の読み。 これ等の要素があったからこそ陸攻は積乱雲への突入を速やかに決断し、分隊士青山以下6人のペアも其を支持したのだ。 しかし…
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