謝肉祭《しゃにくさい》の二乙女《におとめ》

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* * 雨の日は、胸の傷跡が痛む。 「ーーまあ、また豚の角煮を作ってるの? 昨日の分も全部あるのに……。ね、病院に行きましょう由美。一緒に付いていってあげるから」 情けなく媚びたお母さんがやってくる。 でもそんなの、かまってる暇なんて無い。 今日はおばあちゃんの四十九日。昨日より腕によりを掛けて美味しい角煮を作らなくっちゃ。 ずくり……ずくり ありがとうおばあちゃん。おばあちゃんの浴衣のお陰で私はこんなにもお姉様に近づけた。 だから作らなくっちゃ。美味しい美味しい豚の角煮を、おばあちゃんのためにどっさりと。 ずくり……ずくり 生肉を断つ間だけ、私は生を実感できる。 あのときお姉様を刺した掌の感触、生の重みを感じられるこの瞬間だけは、こんなつまらない世界の中でも生の喜びを感じられるの。 私の胸を貫いた、お姉様の確かな愛を感じられるの。 ーーでももう、肉を断つ遊びにも飽きてしまったわ。 お姉様に会いたい。いつもいつまでもそばにいたいの。 だからお願い。 あの約束だけはきっと、きっと守ってね……。 〈謝肉祭の二乙女 終〉
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