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夢、夢。夢か。
---おわりですよ。
彼女の話は終わった。
風が優しく吹いている。
わたしは黙って考えている。
夢かあ。
そうかあ。
ひとつ浮かんだのは、幼い頃みたとりとめもない夢。
今思い出しただけのしょうもない夢。
彼女は、すこしは期待しているのかな。耳を澄ませているかも。
「鉄道なるものを、知っていますか」
もうこれでいいか、と口を開いたつもりであったはずなのに、なぜか分からないまま、身体中に溶岩が詰まったように熱くなる。
わたしの拳が震えた。
「いいえ。鉄道はどんなことをするの? 」その人は厳粛かつ静かに問うた。そんなことはないのに、見透かされたと思った。
顔は右から前を向き、恥ずかしいからか背筋がピンとしてしまった。そうしたら、自分自身に向かって語るしかなくなるにもかかわらず。
「鉄道は、この国を端から端まで縦断するほどの、果てしなくて立派で大きな乗り物です。たいてい沢山の人間と荷物を乗せて運びます」
「遠くまで?」
いまも顔が赤いに違いない。
だが次第に、気分は晴れた日の草原を走る犬のようにきらめいた。
おかしいな。
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