初カノ × 初カレ

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「じゃあここは?」 「まだ習ってない…と思います」 やっと会えたのに 「国立?私立?」 「決めてません…」 「じゃあとりあえず六大学入れればいいな」 「六大学は行かないけど…」 時間ないのに 「学年何番?」 「言いたくないです…」 「何番?」 「120…」 「何人中?」 「200…」 「中の下か」 グサッ! 「ノートな  束買うから1冊持って帰れ」 「はい…」 問題集やら参考書やらノートの束を買った 今、親に彼氏の存在が知れるわけにいかないのも 私が朝霧さんちに行きたい気持ちもわかってくれた 「もう時間か」 店を出ると腕時計を見て 朝霧さんは車に乗った ならば成績を落とすわけにいかない 門限まで遊んでも ちゃんと勉強してますよ作戦 門限まで遊んで成績が落ちれば それは怒られて制限を付けられても仕方ない それにもしこの先 朝霧さんの存在がバレた時 成績が落ちてピアノも下手くそになってたら それこそお父さんもお母さんも本気で外に出してくれなくなりそうだし なにより 朝霧さんを悪く思われたら嫌だなって思った 「うえ~こんなにやるの?すごい量…」 買ってくれた書物を助手席でぱらぱら 「スズは勉強嫌い?」 「好きではない」 「この辺暗いな」 家までの道を上りながら 朝霧さんはキョロキョロ見回した 高橋商店はもう見えてきた 「ここからすぐ?」 「うん」 高橋商店の2軒先の空き地の前に車は停まり エンジンが止まった 「じゃあ…ありがとうございました  明日何ページかやっときます」 「しっかり勉強して下さい」 「はい」 フッて力が抜けるみたいに笑って 朝霧さんは後ろの席に手を伸ばした 「お土産」 って 「こんなにいっぱい?」 「体育祭の準備あるんだろ?  杏奈ちゃんたちと食えよ、おやつ」 岡山らしい桃太郎のお団子とか 桃のケーキみたいなのとか箱が三つも 「うん!ありがと!」 「や…間違えたな」 「え?くれないの?」 「家に置いてるから学校行くときに取って行って  ノート買いに行ったのに  岡山土産っておかしすぎるだろ」 「あ、そうだね」 アハハハハハって笑って 見つめ合ってしまった目と目 急に違う空気に変わる 目をそらすのは恥ずかしいから 朝霧さんは自分の膝の上でギュッと手を握りしめて フッと息を小さく吐いた 「家に着くまで電話繋いでて  スズが家に入るまでここにいるから」 ノートを1冊持たされて 私は車を降りた
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