初カノ × 初カレ

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* なかなか会えなかった 朝霧さんの休みは基本は土日らしいけど 平日の時もあり 明日休みだと言っていた昨日 だけど今朝早く届いたラインは 『ちょっと岡山行ってくる』 デートはキャンセルになった 「で?それ何?」 「クッションとハーフケット」 大きな袋を持ち出すのは目立った だけど「体育祭ので使うの…」って言ったらお母さんは別に何も怪しまなかった 「本人いないのに行って楽しい?」 英介は呆れてた 「楽しい」 「ま、朝霧さんもスズちゃんが来てて  喜んでると思うよ、会えない分とくにね」 「しかし毎日よく行くよね~」 九月にある体育祭のクラス応援旗を作った帰りだった お盆の前に旗を完成させて クラス発表のダンスの曲を決める 八月後半からちょいちょいダンスの練習 二学期が始まると本格的に体育祭の準備が始まる 10月にはコンサートがあるし テストもあるし なにかと忙しい 「スズ、ピアノちゃんと弾いてんのか?  そんな門限ギリギリまで入り浸って」 ギクッ 「いいな~行ってみた~い高級マンション」 「杏奈…俺も将来買うからな!」 「絶対よ」 「どこがいいんだか、マンションなんて  そんなもん持ってかないといけないのか?  どんなマンションだよそれ」 英介は私の大きな袋をポテトで指さす 「何もないの  テレビと机と冷蔵庫と電子レンジだけ」 「ベッドは?」 「ない」 「布団派か?」 「わかんないけど何もないから  クローゼットに置いてあるのかも」 「何が楽しいんだ…」 あの家は朝霧さんの匂いがする 忘れていたけど あの満員電車で助けてくれた日 こんな匂いだったなって思い出した あれしか密着したことはない あの手に触りたくて あの手でギュッてされたくて 何でも言えって言われたけど それは恥ずかしくて言えなかった あの手でよしよしって撫でて欲しいのに って考えたら 「スズちゃん?顔赤いよ?」 「変なこと考えてるでしょアンタ」 「何を考えてんだよスズ…」 駅前でみんなと別れ 私は日課になりつつある朝霧邸へ 18時24分の各駅停車に乗れば19時にギリ間に合う それまで私は朝霧さんの家で過ごした 何もすることはない テレビつけて 持ってきた宿題やって おやつ食べたりメモ書いたり 今日はクッションを持ってきたから 寝転がっても痛くなかった
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