初カノ × 初カレ

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街灯が薄暗くポツポツと等間隔に並んだ道を 一気に駆け下った 丁度電車の着いた駅の駐車場に 朝霧さんの車が見え 運転席にぼんやりスマホの液晶が光っていた もどかしく赤信号で止まる足 家の近くまで来ると言ってくれたけど これでお父さんに見つかったら大変なことになる 青! 「あ!スズじゃん!」 「お~スズ~」 「あ…お~い」 今電車から降りてきたらしい中学の同級生たち 「夏祭り会わんかったね~」 「英介と来てたんだろ」 「や、明日香たちも…」 「そういや三年三組クラス会やるって言ってたよ」 「そ…そうなんだ」 「中島たちが盛り上がってたよ」 という 同級生との会話も右から左 チラッと車の方を見ると 「スズ?聞いてる?」 クスっと笑いながら見ていた 「ごめ…また連絡するね」 「あ、急いでた?ごめん  英介にも言っといてね~」 みんなが行ってしまって 朝霧さんは車から降りてきた 「大丈夫だった?家」 「うん」 「ごめん、無理言って」 「ううん…だって」 「会いたかったの…」 「知ってる」 朝霧さんはYシャツの胸ポケットから プーさんのメモを出した 私が書いた 『会いたいな』 「ノート買う時間、10分くらい?」 「うん…」 たったの10分 「高橋商店まで送る  そしたらプラス3分」 「ちょっとだけ立ち読みしたことにする…」 「心配かける」 「心配なんてしてないよ  勉強しろピアノ弾けってそれしかない  ちゃんと門限には帰ってるのに」 「待って…」 朝霧さんはひどく驚いた顔をした 「スズ門限までうちにいるのか?」 「うん」 「マジか…」 「え、ダメ?ちゃんと宿題してるよ」 「うん、英語の問題集が落ちてた」 「明日もやるから置いてたの」 「ピアノは?」 「音楽室で…」 「スズ」 なんでそんな困った顔なの… 「親に俺が会ったら無理?」 は? 「毎日門限ギリギリに帰ってたら  そりゃ心配するだろ?学校もないのに」 「そうだけど…」 「ちゃんと挨拶してうちで勉強したりしてるって  俺が話すから」 そんなことしたら 「たぶん一生会えなくなる…」 「……」 「ごめんなさい…」 「いや…  ウソつかせてごめんな」 また迷惑掛けちゃってる せっかく会えたのにこんな空気 朝霧さんは何か考えてるみたいに しばらく黙ってしまった 「ノート買って帰るね」 「スズ行こう」 何かを決意した断固たる表情で 朝霧さんはツタヤに行った
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