初カノ × 初カレ

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* スズが持ってきたシロクマのクッションと 小さなタオルケットは スズの匂いがした 車に乗ったとき 一瞬フワッと香るスズの匂い 香水はつけてないだろうから シャンプーなのか洗剤なのか なんの匂いなのかはわからない 未だ布団やクッションの類いのない家で やっと枕にありつけて 可愛いシロクマに頭を置いたとき その匂いに心臓が跳ね上がり スズの匂いを感じ取り 一瞬でもこの腕の中にいるスズを想像してしまった自分が 汚く思えた だからスズのクッションは使えなかった スズを汚してしまいそうだった 「それ可愛いな」 静香はペンギンの形のメモ用紙に書いて それを総務に回す書類に貼った 「キモいことは休み休み言ってくんない?」 「付箋紙か」 「昨日はキキララのメモ帳買ってたわよね  そこのローソンで」 可愛い付箋紙に書いて貼ったらスズ喜ぶかもしれない 「赤ペン先生、100均にでも行ってみな  このペンギン100均だから」 「今度ロフト行ってくる」 「ごめんね100均で」 家に帰ると 今日やった分の問題集が置いてある 答えも置いてあるけど スズは自分で答え合わせはしてなくて わからない箇所には青ペンで印が付けてあった だからメモに説明を書いて ページにはちみつのテープで貼った デスクにいくつでも転がってる普通の付箋紙と クリップなんかを鞄に入れた 交換日記みたいなメモに 交換日記みたいな問題集 PPP 『ごめんなさい!お盆は旅行に行くの(T_T)』 マジですか… そりゃそうだな 親父の休みって旅行やらばあちゃんちやら連れて行かれてたな これはたぶん前もって約束したとこで ダメなやつだ 正月もか… 「静香さん」 「何よ気持ち悪い」 「お盆ヒマ?」 「実家帰る」 「ですよね」 年を取るごとに遊んでくれる人が減る きっと地元の友達も無理だ 結婚してるからな 仕方ない スズと付き合うのにそれはついて回る 「旅行とか行きてえ…」 「無理だろうね」 「ですよね…」 三連休、なにしよ 「布団を買いに行け」 「無いならないでいける」 「あったら押し倒したくなるもんね」 「ならん」 「いいけどさ、冬までに買いなよ  やるやらない別として  スズちゃんに可愛いの選んでもらえば?  添い寝くらいしてくれるかもよ」 添い寝か 何年先だろう そんな日はくるんだろうか 手 繋ぎたかったな
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