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「友利先輩がボクを見ていてくれたこと、本当に嬉しかったです」
その子のその言葉に僕はおずおずと視線を押し上げていた。
その子の身長は僕よりも10センチぐらい高くて僕よりも細い。
「ま、またそうやって僕のこと・・・か、からかわないでよっ!」
僕はそう言ってその子の目をなんとか見返した。
その子の目を見返してまず、僕が思ったことは本当に綺麗な顔をしているな・・・だった。
そして、次に思ったことは意思の強い、真っ直ぐな綺麗な目をしているな・・・だった。
その子の綺麗な顔立ちも意思の強い、真っ直ぐな綺麗な目も僕は羨ましいと思った。
けれど、僕が何よりも思ったことは・・・。
「からかっていませんよ? 本当に嬉しかったです」
そう言って僅かに微笑んだその子の笑みに僕の心の内は更に掻き乱された。
「な、なんで嬉しいの? ただ、目が合っただけなのに・・・」
僕はその言葉に期待と落胆とを込めていた。
期待なんてしちゃいけない。
だからはじめから期待なんてしていない・・・。
なのに、僕は・・・。
「ボクが友利先輩のことを恋愛的な意味で好きだからです。ボクが友利先輩を気にしているのわかりませんか?」
迷いなくそう告げられたその子の言葉に僕は目を丸くし、息を詰まらせた。
そんなこと・・・。
「・・・どうして・・・どうしてそんな嘘を吐くの?」
信じられない・・・。
信じられるはずもない・・・。
その子は・・・最上 雛人くんはまたいつものように僕をからかって遊んでいるんだ・・・。
そして、雛人くんは僕の気持ちに気づいていたんだ。
僕の気持ち・・・それはつまり、雛人のことを気に掛けている僕の淡い気持ちに・・・。
嗚呼・・・もう本当に・・・最悪だ・・・。
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