きになるあのひと

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「せんせー、この字なんて読むんですか?」 ぼくは香山(かやま)先生のエプロンを引っ張って、開いた本のページを見せた。 茶色い髪を後ろで結んだ香山先生は「ん?どれどれ?」と覗きこんでくるので、ぼくは読めない字を指差した。 ‘’少年は木に生っている中で一番大きいリンゴをもぎとった” というところだ。”生”が”生きる”とか”生物”とかに関係する漢字という事は知ってるけど、“木にいきっている”とは言わないし、”木にせいっている”も聞いた事がない。 「木に…ああ、これは”なっている”って読むのよ」 「なっている?」 「ほら、リンゴとかバナナとか、木にくっついてるものでしょ?木の実が実ってるのを、生っているっていうの」 香山先生の説明に、ぼくは「へぇー」と言いながら納得した。確かに、「木になっている」は聞いた事ある。改めてページを見てみた。 “少年は木になっている中で一番大きいリンゴをもぎとった”…なるほど、通じる。
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