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二人分の昼食を両手に持って、和室のテーブルまで来ると、溶けたアイスの様に項垂れる晴が不貞腐れている。
「じゃあ、分かった。今日、士朗と夏祭り行くだろ? それは絵日記に書かずに作文に書け。良いな?」
「はぁい!」
「よし、じゃあ、サッサと食っちまえ! 俺はもうすぐ仕事に出るから、士朗帰って来るまで、ちゃんと一人で留守番するんだぞ?」
「はぁい! いっただっきまぁす」
霧はパートナーである巽篤朗とその息子の士朗、それから今は亡き姉が遺した晴と四人で暮らしている。
紆余曲折ありはするけれども、士朗も無事就職し、去年成人を迎えた。
中学の頃から、離婚した篤朗の息子の面倒を見て来た霧にとって、晴を育てるのは歳の離れた兄弟を育てている感覚に近い。
とは言っても、十三も歳が離れているせいで、幼い頃の晴の面倒は殆ど士朗が看ていた様なものだ。
「ねぇ、キリ。シロー、なんじにかえって来る?」
「今日は午後休取ったって言ってたから、もうすぐ帰って来るんじゃね?」
「きよみちゃんは? 来る?」
「さぁ? 来るんじゃね? 晴、お前、Tシャツに麺汁飛ばしてんじゃねぇよ!」
「あー……」
清水ちゃんとは、士朗の恋人で、医大に通う天然男だ。
晴はこの清水ちゃんが大好きで、今日は県外の大学に行った清水に久しぶりに会えると、朝から気もそぞろで、いつにも増して落ち着きがない。
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