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「…クリムゾン殿下、お宵でらっしゃいますか?」
微かに扉を開く音がして
暗がりの中、低く圧し殺した声が囁いた
ローン王国聖王騎士団近衛兵団宿舎でももっとも豪華な一角に
王子クリムゾンの寝室はあった
時は未明。しかしクリムゾンは目を覚ましていた
枕元の短剣を秘かに手繰り寄せ乍ら
半身を起こして応える
「その声はギルバート候か。何かあったか」
宵番の小姓に誰何されずにここにいるという事は
どのみち通常の身分でも用でもない
近衛兵団団長のギルバートは、簡潔に言った
「両陛下、ご不例にございます」
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