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「今日もよろしくお願いします!」
「まぁまぁ!よろしくねぇ!」
にこやかで温厚な絵美さんに、現場の人間も皆絵美さんを慕っていた。
作業開始から数分後、絵美さんが突然私の脇腹をギラリと睨みつける。
「こらっ!!」
びっくりして思わず飛び上がり、握っていたパーツを落とした。
とんでもない剣幕だったのだ。
「な、なんすか!?」
散らばった部品を一緒に集めながら絵美さんが微笑む。
「なんでもないわ!」
なんでもないわけ無いよね!?
清々しい程隠された!
今、確実に、私のそばに居た見えない何かを叱ったのに。
そうか。
袖が引っかかる度に何か突起物やらがあるのかと作業台を撫でたり裏を見てみたりはしていたのだが、何も分からなかったはずだ。
ここにナニカが居たのか。
「実は作業台をここに移動してからずっとです」
「気にしては駄目よ?振りほどくだけでいいの!気にしないの!いい?」
気にさせたのは絵美さんだけども。
「そですね…」
それからも、作業中に肘付近の作業服を摘まれる事があった。
私の気を惹くように、ちょいちょいっと摘んでくるのだ。
き………気持ち悪い。
これって幽霊だったんだ。
振り払うのも怖いし、不自然に突然背伸びをしてみたりする。
ガッと掴まないのが余計に怖い。
そんな日々が続いた。
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