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なぞのあそび
子供の頃、向かいに住む幼馴染のSちゃんの、年の離れたお姉さんが遊んでくれた。
そのとき私と、Sちゃんと、あと何人かの子供がいたと思う。
私の家は青果問屋である。作業に用いる大きな台車を使って電車ごっこをすることになった。
お姉さんが車掌役だ。彼女はまず片道切符を売る。往復切符は売っていないという。
切符を買って台車に乗り、お姉さんが押す。
私とSちゃんの家は踏切とは目と鼻の先だ。そこをスタート地点にし、1kmほど先にある駅の方面へ向かって線路沿いの道を動き出す。ただしその道は階段に突き当たるので、そこが終点という設定だ。
緑の鉄骨の柵が組まれた線路沿いの道半ばで、電車が一度止まる。
「ここは途中の駅で、降りることもできる」と、お姉さんは言う。
「ただし片道切符なので、帰りには乗れません」
私は台車に乗るのをもっと楽しみたかったので、降りなかった。誰も降りなかった。
再び動き出す電車。終点が近づく。そして。
「ドカーン!」
というお姉さんの声。
彼女は告げた。終点で事故が起きて、私達は死んでしまったと。死体はじっとしていなければいけない。
「いま魔法で生き返してあげるからね」
キラキラとかなんか、呪文みたいなものをお姉さんが唱えて、私たちは生き返る。
私は呪文が終わるまでじっとしていなければいけないのが、なんだか恥ずかしかった。
台車は踏切前まで戻って、もう一度これをすることになった。
私は死体になって呪文で生き返してもらうのが恥ずかしいので、今度は途中の駅で降りることにした。降りたのは私だけだった。
みんなを見送る。また事故が起きて、また呪文で生き返しているらしい。
電車が戻ってきて、私の前を素通りする。私は乗せて貰えず不服を言う。だって片道切符だし、とお姉さん。
仲間外れにされた感が嫌なので、3度目は降りずに終点まで行った。
やっぱり事故が起きた。なんでまた事故が起きるのか理解に苦しんだ。
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