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出会い
爽やかな朝のプラットホーム。季節は五月の連休をすぎた初夏だった。
外れとはいえ東京にあるこの辺りでは、昼にもなれば半袖でもよいような日差しになるが、八時前のまだ早い時間では少し眩しいぐらいの、気持ちのよい太陽がホームを照らしている。
プラットホームにまばらに列を作り、次の電車を待つ乗客の数は、日曜の朝ということで平日の同じ時間帯の半分以下だった。それぞれ、束の間の過ごしやすい季節を堪能するように、ホームでくつろいだ表情を見せている。
そんな中、具合でも悪いのか、顔をしかめる青年が一人――。
(やっぱり……この駅、使うんじゃなかった……)
青年――広瀬鈴(ひろせれい)は、沈鬱な表情でため息を吐いた。
この駅は、鈴が普段使う駅ではない。東京の東に位置する、JR線沿いのK駅。人身事故が多いことで有名な駅で、いわゆる――自殺の名所だ。
鈴は俯き、自分の軽率さを悔やんだ。ただの大学生にしておくにはもったいない、整ったきれいな顔は歪み、心なしか顔色も悪い。
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