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入らずの藪
数日後。鈴は大学の中庭にいた。
ラウンジの窓から見えるその場所は、小さな噴水を中心に手入れされた植栽が美しい庭で、学生が休めるよういくつかベンチも置かれていた。
ベンチにリラックスして座る鈴は、噴水の水しぶきをボーッと眺めていた。隣には、同じようにくつろぐ新一がいる。
鈴は、こうして隣に新一がいることにすっかり慣れ、自然に感じるようになっていた。
相棒(仮)の仮が取れる日も近いのだろうか――と思って、鈴はコッソリ笑った。
対する隣の新一は、なにやら難しい顔をしている。彼には気になることがあるらしい。
「和泉さん、あの後どうしたんだろうね。沼田のこと、調べてくれてるのかぁ」
あれから数日経っても、新一の頭の中はあの件でいっぱいだ。『呪われた踏切』に関わることで。
鈴はため息を吐いてから、新一に答えた。
「一回電話で聞いてみたけど、教えてくれなかったんだよ。どんな事件でも、捜査の進捗状況は関係者以外には話せないって」
「無理なお願いしちゃったんだもんね、しょうがないけど……」
気になるなぁ、と新一は腕組みをした。
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