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普通の見た目からは想像できない変人同級生にほだされた鈴は、やたらとのどかな田園風景を走るローカル電車に揺られていた。
平日の午後という時間もあって、鈴たちが乗る車内には鈴と新一の他には女子高生が一人と高齢の男性しかいない。車両は六両ほどあったはずだが、他の車両も同じように閑散としている様子だ。
寂しい車内と窓から見える景色に、生まれ故郷を思い出す。とはいえ鈴の生まれ育った町は、まあまあの規模の地方都市のベッドタウンでもあったので、電車はもう少し乗客がいたような気がした。
「……おーい、広瀬、聞いてる?」
車窓を眺めてボーッとしていた鈴を、隣の新一が覗く。新一は大学からここまでの二時間弱、己の心霊論を一人で熱く語り、さらにはこれから向かう心霊スポットの曰くを、聞いてもいないのに喋っていた。
それにウンザリして車窓に目を向けたのだ。鈴は誤魔化すことなく答えた。
「……聞いてない」
「え? ヒッデー! あんだけ長々と喋らせといて。それとも俺の話より、外の景色の方が面白かったとかいうわけ?」
「……そうかもな」
「マジ? 田んぼの景色が珍しいとか?」
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