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これから二人が向かうのは、このローカル電車の終点の二つ前の駅から行ける、廃墟となった古いラブホテルだという。インターネットでこの県の心霊スポットと検索すれば、かならず上位に出てくるぐらい有名な場所らしい。
始まりは三十年ほど前、ラブホテルを営業していた頃に、不倫の末の別れ話で男が女を殺す事件がホテルで起きた。それからホテルは経営が傾き、数年後に倒産。別のオーナーに変わって営業は続いたが、今度は客のカップルが薬物の過剰摂取で二人とも死亡してしまった。その後、今から十五年ほど前にホテルは廃業し、それから買手がつかないのか廃墟のまま放置されているという。
「一番目撃証言が多いのは、若い女の幽霊みたいだな。最初の殺人事件の被害者じゃないかって言われてる。その他にも、その女に呼び寄せられたらしい霊が、老若男女数多く目撃されてるってさ」
新一はスマートフォンの画面を眺めながら、楽しそうに語った。
「ある若い男女のグループが、心霊スポット探索にホテルに行った時は、中では謎の音を聞いたぐらいしか変わったことは起きなかったんだけど、ホテルから出てきて車に戻ったらフロントガラスに……たくさんの手形がベタベタついてたんだって!」
「ええ……メッチャどっかで聞いたことあるんだけど……」
鈴は突っ込まずにはいられなかった。怪談なんてそんなものだとわかっているが、あまりに古典的すぎる。
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