廃ホテルの怨念

21/44
前へ
/204ページ
次へ
「あ、また言う? 幽霊はいないって。この話は確かに聞いたことがあるような話だけど……他にも色々……」 「あ! いいって! どうせ現地に行くんだから、そこの怪談なんて聞かなくていいよ。それより江藤って、いつもこんなことしてんの?」 「こんなことって……心霊スポット巡り?」 「幽霊信じてる割に、軽く言うなぁ……路線バスの旅かよ。まあそういうこと。他にも行ったことあんの?」 「ああ、あるよ。広瀬と会ったK駅もその一つだし」  鈴が目を丸くする。東京都心の高級住宅街に住んでいるであろう新一が、日曜の朝早くにあの駅にいた理由がようやくわかった。 「俺さ、ちょっと前にこれから行くとこみたいな、郊外の廃墟に一人で出かけたんだよ、しかも夜中に。したら、まんまとヤンキーつうの? ヤバい奴らに遭遇しちゃってさ」 「え、大丈夫だったのかよ」 「うん、お金でなんとかなった」 「……か、金?」 「そ。ほら、俺って相当なボンボンじゃん? うちのお父さんって、なんでもお金で片付けるタイプの人でさ。……とにかく、絡まれそうになったから現金適当にばら撒いて逃げたんだ。そんな危険な目に遭ったから、次は街中の心霊スポットにしようと思って、人身事故が多くて有名なK駅にでかけたわけ」 「なんで……そんなことしてんの?」     
/204ページ

最初のコメントを投稿しよう!

35人が本棚に入れています
本棚に追加