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「そういうのが横行してるから、幽霊はいないって言われちゃうんだよなぁ。でも、幽霊さんサイドにも問題はあると思うよ。なにか言いたいこと、希望ややりたいことがあって死んでからも彷徨ってるんだろ? だったら、人前に出てくる時に名前ぐらい名乗ってほしいわ。いっつも一方的なんだよ、コミュニケーションが成り立たないの」
それが悩みだ、と新一はため息を吐いた。随分――おかしな悩みである。
鈴は、幽霊といわれるものが見えることが悩みだった。人と違うものが見えることは、煩わしいことでしかなかった。
誰かに話したことも、ほとんどない。幼い頃に一度だけ、母に見えてしまったものについて話したことがある。母は否定こそしなかったが、母以外には話さない方がいいと優しく何度も諭された。
その時鈴は、自分が人が見えていないものを見ているのだ、と知った。それはひどく――悲しいことで、寂しいことだった。
しかし新一は――。
「いつも話しかけるんだよ、幽霊に。周りに人がいない時は、思いっきり声出して話しかけるしね。だけど……無視。時々驚いた顔されたりもするけど、それだけ。会話できたことはないんだよなぁ。なんでなんだろうな? 元は人間で、多分日本で見かける霊なんだから日本語わかってるはずだよな? 幽霊って、人間と話しちゃいけない決まりでもあんのかな」
見えてはいけないものと、関わりをもつことに熱心だ。新一も悲しそうだがそれは、鈴の悲しみとはまったく違う。
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