廃ホテルの怨念

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 変人の新一を、鈴は羨ましい、もしくは尊敬したい気持ちにさえなってきた。自分も新一のようにふっ切れたら、もっとずっと生きやすいだろうか。  噛みあっているのか噛みあっていないのかわからない会話を続けながら、やがて電車は目的の駅に着いた。  ローカル電車の終点から二つ前の駅は、かろうじて自動改札が設置されているような、ひどく寂しい駅だった。二台だけの改札を抜けて駅の外に出ると、一応小さなロータリーにはなっているが、コンビニもなければタクシーの一台も停まっておらず、電車の車内から見えた水田がすぐ目の前にあった。 「こっから、そのホテルまでどれぐらいかかんの?」  鈴から見えるところに、廃ホテルらしき大きな建物はない。遠くにいかにも田舎風な一軒家が、ポツリポツリと何軒か見えるだけだ。  新一を振り返ると、新一はスマートフォンを操作していた。 「ん~、歩くと一時間以上かかるっぽい」 「マジかよ。ここ……バスとかあんのかな」 「バスもあるみたいだけど……一日に五本しかないらしいから、タクシー呼ぶね」 「は? タクシー?! っておい」  驚く鈴に、新一は口に指を当てて黙るよう指示した。そしてスマートフォンで検索したのだろう、地元のタクシー会社に電話してこの駅に来てもらうよう依頼した。 「よかった。タクシー、五分もしないで来てくれるって」     
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