廃ホテルの怨念

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 冷やかされ、口ごもる。チャラついていたつもりはないが、指摘の通り、一緒にいる女の子は安定しない。 「この前K駅で会った時も、彼女の家から朝帰りだったんじゃないの? 羨ましいよなぁ~、イケメンのモテ男は」  彼女ではない、と訂正しようと思ったが、そうすると余計にチャラ男扱いされてしまいそうなので――やめた。  鈴はアルバイトに励み、勉学にも熱心な、今時珍しい真面目な苦学生だ。鈴が受けている奨学金は、宮川学園があの震災以降初めて設けた、震災遺児を対象にした奨学金制度である。その第一号学生である鈴が優秀な成績を残さなければ、制度が廃止されてしまうかもしれない。そんなことになっては、後輩たちに申し訳が立たないから、勉強だけは頑張らなければならなかった。  と、根は真面目な鈴であるが、どうしてか女性関係だけは上手くいかない。女遊びが好きというわけではないが、一人の女の子と長く続いたことがない。 「彼女、可愛い? 広瀬が連れてる子って可愛い系が多いよね。今の彼女はうちの大学? それともバイト先の子とか? 出会いは? どっちから告ったの?」  新一がニヤニヤして冷やかしまくる。鈴はムッと顔をしかめた。 「うっせぇな、江藤に関係ないだろ。江藤は? 江藤は彼女いんの?」     
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