廃ホテルの怨念

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「そう! やっぱ広瀬は俺と同じもの見てんじゃん! ヤッベェ!」  テンション上がるぅ! と新一が駆け出した。ホテルに入る手前で振り返り、広瀬も来いよ! と満面の笑顔で呼ばれた。  鈴はあ然とし、青い顔で新一を見つめた。 (怖いのは……お前だよ)  引き返したくなったが、タクシーでなければ駅まで一時間以上歩くことになる。しかしこんな不気味な場所で、一人で新一を待っている気もしなかった。  しかたなく、鈴は新一を追ってホテルの敷地内に足を踏み入れた。パリンと足元でなにかが割れた音がしたが、鈴はなにも踏んではいなかった。  音の正体は不明だが――突き止めるのも怖かった。  塀が重なって中が覗けないようになっている正面入り口を通ると、ホテルの建物のまでの短い間におそらく噴水か滝のようなエクステリアがあり、かなり朽ちてボロボロだった。そこを通って建物への入り口に着く。  ホテルの正面玄関は、もとは自動ドアで、廃墟になってからは施錠されていたはずだ。しかし格子柄のガラス扉は、ちょうど人が一人通り抜けられるぐらい開いている。侵入者の誰かが力づくで開けたのだろう。     
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