廃ホテルの怨念

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廃ホテルの怨念

 翌日、鈴は大学のラウンジにいた。今日は午後に二つの講義があり、その後は夕方から居酒屋でアルバイトだ。講義が終わって、アルバイトまでは少し時間がある。第二外国語でとっている、スペイン語の課題をこなしながら時間を潰しているところだった。  四限の後のラウンジも、昼休みほどではないが学生は多い。このラウンジはカフェメニューが充実しているので、学生に重宝されているのだ。  試験前でもないこの時期の学生たちは、友人や先輩後輩、または恋人同士でくつろいでいる者がほとんどだ。鈴のように、真面目に課題と向き合う学生は見かけない。  近くの四人掛けのテーブルから一際大きい笑い声が聞こえ、ふと顔を上げた。図書館でもないのだから、大きな声で笑う学生がいても腹が立ったりはしない。ただなんとなく、そちらを見ただけだった。  ちょうど男女二人ずつの四人連れだ。くだけた笑顔から、友人同士だと思われる。特別目立つ四人組ではないが、テーブルに置かれた女子二人のカバンは、学生が持つには贅沢な部類の高級ブランドのものだった。     
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