廃ホテルの怨念

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 戸惑う鈴の様子を見て、新一が気まずそうにする。失礼な男だと思ったが、常識がないわけではないようだ。 「無神経な言い方してごめんね。ただ俺……テンション上がっちゃってさ」 「テンションが、上がる? なんで?」  時々いる、芸能人の親戚をありがたがるタイプだろうか。この学園には、芸能人を親に持つ学生も多いのに。  それに――と、鈴は新一の名前にある事実を思い出した。 「江藤新一って……松芳(しょうほう)グループの御曹司! あんたの親父さんて、映画会社の社長じゃなかったっけ?」  学内の有名人の噂話は、大学からの宮川生である鈴も多少は知っている。大企業の社長の令息令嬢ともなれば、勝手に耳に入ってくるものだ。 「あ、俺のこと知っててくれた? そ、うちのお父さんは松芳グループ系列の、映画会社の社長。女優の甥の広瀬と、なんか縁を感じちゃうなぁ」  新一の事情を知ると、鈴の不信感はますます膨らんだ。映画会社の社長の息子であれば、芸能人など珍しくもないだろうし、会いたい芸能人がいれば親に頼めばいくらでも会えるだろう。  それなのに、新一はどうしてこんなに嬉しそうに自分に話しかけてくるのか――。鈴の眉間に深い皺が寄る。 「あんた、俺になんの用なわけ? 学部違うし、授業も被ってないのに……」     
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