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また夢を見ているようだった。 オレンジに染まった夕暮れの空。 いつも通り、彼と一緒に歩く帰り道で、ただ二人でその日の出来事について話している。 とても楽しい会話のはずなのに、彼の言っている言葉が聞き取れない。 代わりと言わんばかりに、周りの景色は鮮明で、オレンジの夕日が彼を照らしていて、 不気味でもありつつ、写真のように綺麗だった。 「そんな見んな。」 彼が恥ずかしそうにそう言ったのが聞こえて、私が首を傾げると彼は私から少し離れて壁に近づく。 そうして、その瞬間はやってきた。 どん、という地鳴りのあと、ぐらぐらと立っていられないくらいの揺れが来る。 私は思わずしゃがみこんで、彼を見ると、彼もまた壁を背に、しゃがみこんでいた。 何か叫んで腕を差し出しているけれど、聞こえない。 ぐらぐらと、ただただひどい揺れが、電柱すらもひどく揺らして、叫び声と地鳴りと、物のぶつかる音とが響いて、地獄とはこのことかもしれない、とただ、私は思った。 パキ、と嫌な音がして、私ははっと顔を上げる。 彼が背にしたブロック塀にヒビが入っていた。 それはどんどん上へ上へ広がっていく。 「危ない!!!」 彼に届いたかは分からないけれど、彼に向かって腕を伸ばす。 そして、大きな塊になったブロック塀の一部だったコンクリートが彼に降ってきた。 思わず、私は目を閉じてしまった。
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