私にできること

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昼休みに中学辺りからあんまり行った覚えのない図書室に行き、地震、地震の少ない国や、日本から行く方法を調べる。 海外に行くだけなら、今まで貯めておいたお小遣いとちょっとやったバイト代でなんとかなりそう。 だけど、海外に行くにしたって、永住できるわけでもない。 そのときだけ、逃げることはできても、日本に帰らないという選択はできないし、それに、学校がまだ休みに入る前だったらそもそも旅行と言ったってお互いの親が許すわけがない。 「打つ手なし、かあ…。」 ぐ、と伸びをして机に突っ伏す。 じわじわと絶望が広がって、目の前がチカチカしてくる。 彼が死ぬと分かっているのに、何もできないなんて、そんな、そんなこと。 「なーにしてんの?」 「うわっ!」 後ろからとん、と肩を叩かれて、私が飛び上がると彼が驚いた顔で見ていた。 「そんなに驚くことないじゃん。」 「ごめん、考え事に夢中になってた。」 彼は私を疑い深い目で見ると、大きなため息をついて隣に座る。 向かい合わせになるように、私の袖を引っ張って自分の方を向かせる。 こういうちょっとした不器用なところが可愛いと思ってしまう私は、だいぶやばいのかもしれない。 「他に気になる人でもできたの?」 「…えっ!?なんでそんな話になるの!?」 驚きすぎて声が大きくなったのを彼が、しい、と口元で人差し指を立てる。 「最近俺といてもつまんなさそうだし、」 そう言ってそっぽを向いてしまった彼。 はっきりとした表情までは見えないけど、唇を噛んでいるのが見える。 私は、何をしていたんだろう。 心の中にじわじわと後悔と温かい感情とが絶望を塗り替えていく。 未来の彼がいなくなることに不安がって、未来の彼を助ける前とはいえ、今一緒にいる彼を大切にしないなんて。 「ごめん、そういうことじゃなくて、」 「なにが、」 「実は夏休みも近いし、どこかに旅行できたらなと思って計画を立ててたの。」 ほんとは内緒にするつもりだったんだけど、と付け加えると彼がぱっとこちらを向いた。 じっと私を見つめて、本当かどうか考えているみたいだった。 旅行はあながち嘘でもない、彼のためなのも間違いはない。 嘘はついてない、真実を言わなかっただけ。 私が笑ってみせると、彼はほっとしたように椅子を寄せて私に近寄って机に伏した。
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