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世界最後の一週間
あれから一度だけ、また同じ世界最後の日の夢を見た。
黒猫はまたやってきて、にやりと笑って一週間後の火曜日だと言って消えていった。
私はもう覚悟は決まっていた。
どこか遠くへは逃げ出せない。
私たちはまだ高校生で、お金もそんなにないから。
だったらせめて、彼が喜んでくれることをたくさんしよう。
放課後には一緒に街を歩いて、アイスを食べて、写真を撮って。
今まであんまりやってなかった、記念日のお祝いに、二人の思い出の写真の動画作り。
「バカップルみたいだね、」
「全くだ。」
私の我儘に付き合わせる形で彼を連れ回しているから、彼は少しむっとしたような表情を作ってみせる。
なんだかんだ言いつつ写真を撮ったのを見返したり、一緒に行ったカフェで甘いものを頼みまくったりしていた彼は、とても楽しそうで、私は満足だった。
たった一週間だった。
それでも、私たちは今までよりも一番色んなことをした一週間だった。
すごく楽しそうな彼を見ると、なんでもっと前から色々一緒に出掛けたりしなかったんだろうか、と悔やんだ。
もっと、時間があったはずなのに。
「楽しかったね、」
「うん、まあまあ。」
私がふふ、と笑うと、彼は照れくさそうにそっぽを向いた。
明後日にはもう見られないかもしれない、彼の赤くなった耳。
「よかったらさ、明日、学校が終わったらすぐ私の家に来ない?」
「え、」
お互い、家に呼ぶのはまだ早いかな、と足踏みしていた所があった。
親にはお互い伝えてはいたものの、会わせるのは初めて。
「もし、良ければ、だけど、」
私が言葉を濁すと、彼はそっと私の手を握って、照れくさそうに頭をかきながらうん、と返事をした。
忘れないように、彼の照れた横顔を瞼に焼き付ける。
「じゃあ、放課後に、ね。」
視線を彷徨わせてそう言う彼に、夕日が当たって、夢の中の彼がフラッシュバックする。
落ちてくるコンクリートの塊。
悲しげな表情。
胸の奥でつん、と針で刺されたみたいな小さく、でも、鋭い痛みがする。
大丈夫、私が救うから、心のうちでそう呟いた。
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