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 顔立ちも端正で、まだ齢も若かったこともあって、村の娘たちは皆『先生』と呼び慕われておりました。  そんなものですから、村娘が『菊ちゃん』を紹介してしんぜようという話になったのも、不思議なことではありません。  『菊ちゃん』はいつも決まって夕暮れ時に村に現れます。夏ももう終わりに来たところで、ちょうどその頃は涼しい風が吹いておりました。  『菊ちゃん』はいつものようにやって来ました。  『菊ちゃん』こんばんは。  今日もかわいいね。  お菓子をあげよう。  村の翁や嫗たちはまるで我が孫のように『菊ちゃん』を迎え、手土産を持たせていきます。  そして『先生』を連れて来た娘たちも、彼女に飴菓子を渡していきます。  『先生』もこちらにいらしたら。  一人の娘が『先生』を呼びます。しかし、『先生』は『菊ちゃん』を見るとその場に立つすくんだまま動けない様子でした。  きっと『菊ちゃん』の可愛らしさに目を奪われてしまったに違いないわ。  村娘たちは口々にそう言って憚りません。  『菊ちゃん』は『先生』と打って変わって、首を傾げてとてとてと『先生』の元へ歩いていきます。  そして『先生』の前で立ち止まると、彼に向けて手を差し伸べます。     
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