第2話「恋」の始まり?

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「ねえ。最近カズと木村くん、仲良くない?」 「はい?」 「木村くん、よくカズに話しかけてくるじゃない?」 「そう?」    確かに喋るようにはなったけど。「よく話しかけてくる」ほどでもないと思う。 「木村くんてさ、自分からはあまり女子とは関わらないタイプじゃない。変に騒がれるのが嫌って話聞いたことあるもん。でも、カズにはわりと普通に話しかけてくるじゃない?」  ちょっと呆気に取られながら、美香の言葉に感心した。よくまあ見ているものだ。それにしても、木村くんが「自分から女子とは関わらないタイプ」だとかって話、わたしはちっとも知らなかった。 「カズ、気をつけた方がいいんじゃない?」 「何を?」 「本気で木村くんを好きな子も多いみたいだし。嫉妬とかさ」 「ええ? それはやだな。身に覚えのないことで嫉妬されんのはご勘弁だな」 「身に覚えのない、ねぇ。じゃあさ、カズ。もし、木村くんに「付き合って」とか言われたらどうする?」  美香が興味津々という目を向けてくる。これには苦笑するしかなかった。 「何それ」 「もしもの話。だってさー、カズからちっともそんな話聞かないんだもん。何、男に興味ない?」  ……なんか、それは極端な解釈のされ方じゃないだろうか。 「別にそういう訳じゃないけど。機会がないだけで」  わたしだって、普通に「彼氏」というものが欲しいなぁという気持ちはある。一応、年頃ですから。  でも、付き合いたいな、と思うような人との出会いが今のところないのだ。そして、そういうこと以前に、お母さんのことがあってからはそれどころじゃない、というのが正直な話なんだけど。でも、それは人には言わない。  美香はなんとなく不満そうに「ふうん」と言って、もう一度意味ありげな視線をわたしに向けてきた。 「カズと木村くん、お似合いだと思うよ? 好きになってみたら?」 「好きに――ってねぇ……」  人を好きになるのって、そんなものじゃないと思うのだけど。  返事代わりに大きなため息をついて、ノートに目を戻した。  雑談もそろそろ切り上げないと。次の数学のテストの時間まで、あと五分になろうとしていた。
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