第1話 君の笑顔を守るため

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    *     *      *  ねえ、お母さん。  昔、よく二人でこうして向かい合って話をしたよね。  どんなこと話してたっけ?   すぐに忘れてしまうようなつまらない話ばかりだったけど、わたしたち、よく笑ってたよね。  もう一度、あんな風に笑い合いたいな。もっといっぱいお喋りしたいな。 「――なんてね」   わたしは小さく苦笑した。  今はもう真夜中。時計の針は間もなく二時を指そうとしている頃だ。  希望のことがあったからだろうか、なかなか寝付くことができなかった。  目の前にあるのは物言わぬ写真。きらびやかな装飾をされた、仏壇と呼ばれるもの。仏様がいてお位牌があって。ここのどこにお母さんがいるのか、わたしはまだよくわからない。よくわからないけれど、こうしてここに向かい合って、わたしはお母さんに語りかける。  だけど、わたしの声がお母さんに聞こえているのかどうか、それすらもわからない。  だって、わたしにはお母さんの声はもう聞こえないから。 「何か言ってよ……」    そう呟いてみたって、返事はない。
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