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仁もおとうさんも、希望に「おかあさんはいる」と言ったけれど、わたしは希望みたいにそれを素直には受け止められない。
だって、目の前にいないから。心にあるのはただ思い出ばかり。
いったいお母さんがどこにいると言うんだろう。
お母さんは死んだ。もうどこにもいない。
希望。あなたのお母さんはもうどこにもいないんだよ。わたしたちのお母さんは、もうどこにもいない。
そんなふうに思ったわたしは意地悪なのだろうか。
だけど、わたしにとっては、それが唯一の現実だ。
わたしのお母さんは死んでしまった。
「……っ」
もう大丈夫だと思っていたのに、じわりと涙が浮かんできた。零れないようにとギュッと唇を噛み締めても、涙はやっぱり流れてきてしまった。
「う……」
両手で顔を覆う。せめて声は上げないように、お腹に力を込めた。
きっと、おとうさんも仁も気付いてもいない。みんな希望のことばかりで一生懸命だから。
希望が寂しくないように、希望に悲しい思いをさせないように、希望の笑顔を守るために一生懸命。
まだ二歳という歳で、母親と死に別れてしまった可哀想な希望を守ることが一番で。
だから、きっとおとうさんも仁も気が付いていないのだ。
わたしだって寂しくて辛くて、今にも押し潰されそうなことに。
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