第1話 君の笑顔を守るため

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 馬鹿げている、と思う。  わたしは、希望に嫉妬している。希望ばかりがお母さんを失った現実から守られていることに、わたしは嫉妬しているのだ。  わたしだって――守られたいのに。  そう思うと、余計に涙が溢れてきた。  悲しくて、情けなかった。希望に嫉妬している自分が嫌で嫌で仕方がない。  涙が止まらなくて、膝を抱えてそこに顔をうずめた。気持ちが鎮まるのをこのまま待つつもりだった。  すると突然、ポン、と頭に何かが触れた。 「っ!」  あまりにびっくりして、泣いていることも忘れて、勢いよく顔を上げた。 「じ、仁……?」  顔を上げた先には、複雑そうにわたしを見下ろしている仁がいた。 「なんだよ……」  仁は眉を顰めてその場にしゃがむと、ポンポンとわたしの頭を軽く叩いた。 「こんな夜中に、一人で泣いてんなよ」  わたしは慌てて顔を拭った。 「な、泣いてなんか……」 「別にいいんだよ、泣くのは。ただ、こうやって一人で泣くなって」  仁は優しくそう言って、そっとわたしの頭を抱き寄せてくれた。  ――驚いた。仁からこんなふうにされたことは今までなかったから。  でも、ゆっくりと伝わってくる仁の体温は温かくて、それがわたしをホッとさせてくれた。それなのに、一度止まったはずの涙はまた流れてきて、仁の服に染みを作っていく。 「ごめんな、カズ」  仁が静かに言った。 「きっとカズには無理をさせてるんだな……さっきの希望のことも……カズにまで気が回らなくてごめん」  仁はゆっくりと頭を撫でてくれる。まるで、小さな子どもにするように何度も優しく。 「でも、カズ。こうやって夜中にひとりで泣くのは止めよう。俺も父さんもわかっているつもりだよ、お母さんを失ったカズの辛さとか悲しさとか」  思わず顔を上げた。仁の真っ直ぐな視線とぶつかる。仁が目を細めた。
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