第1話 君の笑顔を守るため

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     *      *      *  今日は特別な日曜日。  予約していたものを受け取るために、駅前の小さなケーキ屋さんに向かった。  五号サイズの、イチゴたっぷりのホールケーキだ。その場で、頼んでいた文字入れのプレートを確認する。  ――happy birthday のぞむ――  チョコレートで書かれた可愛らしい文字に、つい笑みが浮かんだ。  ケーキを受け取ると、妙にウキウキした気分で帰路についた。  家には仁が待機していて、着々と準備を進めていた。  ダイニングの天井には、きらびやかなモールが飾られていて、テーブルの上には、それぞれの席にパーティー用の三角帽子が置かれている。 「あ……」  ぐっと胸が詰まった。  現在は使われることのなくなった席にも、ちゃんとそれが置いて準備してあったから。 「パーティーは全員参加がウチの規則だからな」  わたしの視線に気付いた仁が、悪戯っぽく笑った。 「うん」  またうっかり涙が出そうになるのを堪えて、コンロの前に立つ仁の手元を覗き込んだ。 「あ、唐揚げ?」 「そ。のん、好きだろ?」 「そうだね。他は?」 「寿司とった。父さんのご命令」 「まあ、贅沢」  仁と顔を合わせて笑って、わたしは一度自分の部屋に戻った。
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