最終話 共に歩く未来

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 わたしたちの関係は、お互いの親しい友人にはちゃんと知らせることにした。  わたしはユリに。  ユリは、もしかしたら仁のことが好きだったのかもしれない。だから、このまま友達の縁を切られても仕方ないと覚悟を決めて話をした。  だけど、ユリはとても驚いたような顔をしたものの、それでも次の瞬間には満面の笑顔で「おめでとう!」と祝福してくれた。「仁さんのことは確かに好きだけど、それはただの憧れだから!」と彼女は笑った。その言葉がわたしに対する気遣いだったとしても、それに甘えるしかなかった。変な遠慮は、逆に彼女を傷付けてしまうだけだとわかったから。  一方、仁は、サークル仲間の川崎さんにわたしとのことを話したらしい。  偶然、構内で川崎さんと会った時、「あ! カズちゃん、仁から聞いたよー!」と、何でもないことのように軽く声をかけられた。あまりに軽く言われたので、最初は何のことか分からなかったぐらいだ。後で仁に聞いたらそういうことだとわかって、なんだか可笑しくて笑ってしまった。  嬉しいニュースも聞いた。  小枝子さん――仁の元彼女さんが、十月に女の子を無事出産されたそうだ。  そして、出産と同時に赤ちゃんの父親と入籍したらしい。その辺りの詳しい事情はよく知らない。仁も進んでは教えてくれなかったし、わたしが知る必要もないことだから、聞かなかった。  小枝子さんとはもう会うこともないかもしれないけれど、生まれてきた赤ちゃんと旦那さまと三人で、幸せな家庭を築いていって欲しいと、心からそう思う。
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