第2話「恋」の始まり?

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    *     *     * 「――かわいいねぇ」  中休み、友達の美香が例のノートを眺めながらクスクスと笑う。わたしはそれに苦笑いを返した。 「まぁ、かわいいけどねぇ。困ることのが多い」 「だろうね。でも面白そう」  美香がさらに笑う。以前聞いたことだけど、一人っ子の美香にとって、小さな子どものいる生活というのは「憧れ」なんだそうだ。確かに、傍からは楽しくて面白い生活に見えるものかもしれない。実際は――まあ、わざわざ人の憧れを壊すようなことは言わないでおこう。 「何、それ」  美香の後ろから急に手が伸びてきて、わたしのノートをひょいと掴みあげた。 「木村くん!」  美香が驚いたように顔を上げる。ノートを取ったのは、キムタク――いや、木村琢磨くんだ。 「何、このゲージュツ的な落書き。春山さん描いたの?」 「まさか。弟の作品です」  ため息交じりに言うと、木村くんは楽しげに笑った。  木村くんとはちょっとしたことをきっかけに、よく話すようになった。わたしに弟がいることも知っている訳で、本当は聞くまでもなく、そのノートの落書きが希望によるものだとわかっていたのだろう。 「これ車? かな」 「へえ! よく分かったね」 「え、当たり? オレすごいな!」  木村くんは笑って「ハイ」とわたしにノートを返すと、そのまま「じゃあね」と離れて行ってしまった。  そんな木村くんをなんとなく見送っていると、美香がずいっと身を近付けてきた。
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