最終話 共に歩く未来

7/13

659人が本棚に入れています
本棚に追加
/326ページ
「良かった。サイズぴったりだな」  満足そうに笑う仁。あまりに突然のことに、わたしはどうしたらいいかわからない。 「え、な、何これ……?」 「ん? 指輪だけど」  飄々とそう言った後、仁はにっこりと笑った。 「クリスマスプレゼントだよ」 「あ……」  昨日、わたしからは仁にプレゼントをあげたけど、そういえば、仁からは何も貰ってなかった。特に期待していた訳でもないし、気にしていなかったけど……まさか今日こんなサプライズがあるなんて。 「あ、ありがとう……」  じわじわと嬉しさが湧きあがってくる。だんだん頬が緩んでくるわたしに、仁は悪戯っぽい笑みを向けた。 「そっちの指に付けるヤツはもうちょっと待っとけよ。そのうち必ず、な」 「え?」  そっちの指って……あ。  意味が掴めて驚いて顔をあげたわたしに、仁が素早く顔を寄せる。  唇に仁の温もり。ゆっくり吸いつくように触れると、軽く音を立てて離れた。まだ目を丸くしているわたしを見て、仁が微笑む。 「あーやばい。口紅付いたかな」  少し冗談めかした口調。それはきっと、照れているからだ。 「先、行ってるからな。鍵よろしく」  口を気にしながら靴を履き始める仁に、わたしは笑って言った。 「大丈夫、色付いてないよ」  仁はわたしを見返して苦笑した。 「どーも。じゃ、お先」  外へ出て行く仁を見送って、わたしは右手を目の前に掲げて見た。  今つけてもらったばかりの指輪。細いリングに小さな薄い水色の石――これはたぶんアクアマリンかな。 「きれい……」  呟いてその手をそっと抱きしめ――そこでハッと我に返る。 「あ。行かなきゃだ!」  今は浸っている場合じゃなかった。
/326ページ

最初のコメントを投稿しよう!

659人が本棚に入れています
本棚に追加