659人が本棚に入れています
本棚に追加
/326ページ
* * *
寺での法要が始まる前に、お墓に行ってお参りを済ませることにする。お母さんのお墓は寺の裏手にある墓地の奥の方にある。お寺で桶と柄杓を借りて、わたしたちは揃ってお墓へ向かった。
途中、わたしが持っていたお花を希望が持ちたがった。希望にはちょっと大きめの花束だけど、両手に抱えさせるようにして持たせればなんとか大丈夫そうだ。
「転んで潰すなよー」
からかう仁に希望がプゥッと頬を膨らませた。
「ころばないもんっ」
「ほらほら。ちゃんと前向いて歩け、希望」
呆れたように笑って、お父さんが希望を前に促す。
「そうそう、前向いて歩かないと本当に転ぶぞ。お母さんのお花、ぺしゃんこになるぞー」
「ころばないもん! おはな、だいじょうぶだもん!」
「そぉ? 本当に大丈夫かぁ? 花で前見えてないんじゃないの?」
「みーえーてーるーもーんっ!」
からかう仁とムキになって言い返す希望。その後ろでわたしとお父さんは顔を見合わせて苦笑した。
最初のコメントを投稿しよう!