おとなりの番犬

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おとなりの番犬

 加藤さんの隣に住む若夫婦が、犬を飼い始めた。  このワンちゃんが、とにかくよく吠える。キャンキャン、キャンキャン、朝から晩までひたすら吠える。夕方、隣家に誰かが在宅しているときはまだましなのだが、夜中や朝方にまでキャンキャンやられるので、加藤さんもさすがに閉口していた。  こっそり窓からのぞいてみると、自宅に面した隣家の窓ぎわで、ワンちゃんがキャンキャンこちらに向かって吠えている。これでは(うるさ)いワケだ。あいにく犬には詳しくないので、大きな耳とまんまるの目で吠え続けるその小型犬が、子犬なのか興奮しやすい犬種なのか分からなかったが、在宅で仕事をしている加藤さんにとっては、日々蓄積されるストレスとなっていた。  そんなある日、お隣の奥さんが加藤さんのお宅の呼び鈴を鳴らした。 「いつも騒がしくして申し訳ありません」と、菓子折りを手にして。 「お菓子よりも、お宅のワンちゃんをもう少し(しつ)けて頂ければ」と加藤さんは思ったが、お隣さんは若いのに礼儀正しく気のいいご夫婦だったので、波風立てるのもどうかと「あらあらお気づかいなく」と素直に手土産を受け取った。  
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