朱に染まるとき

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 この騒ぎを聞きつけた彼らはすぐに状況を飲み込むと、応戦する。朱く染まっていくビルは、夕日に照らされて燃え上がっているかのようだった。 「織田さん──いえ、司令! 何故黙っておられたのですか!」  彼の下に息を切らしながら集まり話しかけようとした刹那、織田を除くメンバー全員の腕が飛んだ。蔑んだ眼差しを送りながら、司令と呼ばれた男は口を開く。 「この腰抜けどもが。俺がいつ解散すると言った。俺は首相から密命された暗殺部隊の一。この機会を伺っていただけだ。お前らでも少しは戦力になるかもしれないと思った俺がバカだった。もっとも、敵さんを油断させるカモフラージュとしては役立ったからこの程度で許してやるが、場合によっては切り殺していたわ」  言い終わると、今まで微塵も見せなかった貫禄でビルを後にする。残された彼らは痛みも忘れて呆気にとられていた。
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