朱に染まるとき

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「司令はどうお考えなのですか」 「敵国に行こうにも渡航制限で海を渡れない。どうにかして各国へ忍び込むことさえできたら──」  司令と呼ばれた男は少し目を宙に漂わせる。  わかっているのだ、自分たちの力は大したものではないということを。非力でただ粋がっているだけということを。それでも集ってくれている者達に何らかの回答をしないと示しがつかない。こうしていつも理由を探してはその所為にする。  他の者もこう返ってくることを知ってて不満をぶつける。憂さ晴らしみたいなものであり、決定的な打開策を期待しているわけではなかった。  勿論日々の鍛練すらしていないというわけではないが、この大戦からしたら最弱部隊と言えよう──いや、部隊とすら認識されていない。
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