0人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
お約束な出会い
──どこかの森──
はぁ?くっだらね。
夏のギラギラとした日差しが容赦なく注ぎ込む七月の終わり。
現在進行形で森の地面とキスをしている男……鳴海冬馬十五歳は己の人生に対しそんなことを考えていた。
「………………」
──どうして誰も助けにこない?
そんな考えはとうの昔に捨てていた。
両親は事故で死に、その後引き取ってくれたじいさんも死んだ。
人はいつだってそうだ、大切なものを残して死んでいく、それが遺産なのか絆なのかは人それぞれだが俺にとってはどうでもいい事なのだ。
何故なら俺が一番欲しい大切なものは『大切な人が近くにいる日常』なのだから。
──ヒュウウゥゥゥ。
木々の間を駆け抜ける生ぬるい風。
今の俺にはその生暖かささえ心地よく感じてしまう。
「……」
起き上がろうにもここ何日もまともな食事をしていないせいか身体に力が入らず立ち上がるどころか指を動かすことさえ難しい。
しかし決してお金が無いという訳では無い、両親や引き取ってくれたじいさんが残してくれた遺産はとても多く、少なくとも俺は一人で生きていくならこの先働かなくても一生を過ごせるくらいはあった。
最初のコメントを投稿しよう!