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出会い〜空色の少女〜
もし、あなたが愛する事を赦してくれないのなら、いっそ魚になって海の底に潜ってしまいたい。恥で紅色に染まる顔を晒したくはない。
この身体いっぱいに、銀の鱗を纏って、細かな鰓で笑気の様な麻酔に酔いしれ、この胸のモヤモヤを潰してしまいたい。
同じ群の中に溶け込んで、一生誰ともつかず、捜す者も無くなればいい。
ーーー
とうとう購入してしまった。
海浜水族園の年間パスを。
私、大島夏海は生き物が大好きなのである。年齢?きいてくれるな……まだまだ若手のOLですよ。っと悩みは背がデカいこと。だって172cm近くあるんだぜ??そして付いて回ったようなこの乱暴な口調。ああ、もういっそ男に産まれたかった。
物心ついた頃には既に、精神の狂った子。病院ををたらい回しさ。
就学前の記憶に確かにーーああ、私は『精神的に悩みを抱えている人たちのための』病院を連れ回されているんだーーと自覚していて、そして、自分はどこも狂ってはいない、ただ周りの人たちよりはるかに物事の真理に辿り着く機会が多くて、幼いが上に思わずそれを口にしてしまうだけなのだ、とーーそう主張したかったのである。
おっと、自分語りをしているうちに、電車は海辺へ向かってどんどん進んで行く。
その足を緩めることなくーーいや…。『ただいまぁ…架線にぃ…侵入物がぁー…ブッ。』たぶん、夏の熱気に浮かれた誰かさんが、送電線に風船でも絡ませてしまったんだろう。な。
運転はほんの数分で再開された。
そして、またすぐに目的の駅に到着してしまうのである…。私に物思いにふける時間を与えようともせず…。
この駅は、浜辺に遊びに来る者、総合病院を利用する者、地域の住民、そして、私たちのような動物を愛する者たちが一堂に会する駅である。
なので、年齢もファッションも、色んなことがちぐはぐでヘンテコなものも当たり前のように存在できる。
例えば…隣のドアから出てきた…。
髪の色が明るい空色で、さらさらロングヘアー、左側に編み込みのお団子が可愛い…、なんだか見惚れてしまう。
ーーいやいや!!そんな女の子とはなかなか遭遇しないでしょ!?ここは某テーマパークじゃねえぞって…。
しかも、めっちゃ美形で身長小っちゃくて…。服装は風になびく青空と相反する様に、真っ黒な入道雲みたいなワンピースを着込んでいて…、マジ、アニメキャラかって。
そんな、私の心を奪った少女は人混みに紛れ、どこかに消えて行ったのでした。
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