ドール

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 マンションの管理人は清掃や受付業務が主で、それらは比較的楽な仕事だったが、骨が折れるのがクレーム処理だった。隣人の騒音問題が圧倒的に多かった。住人は本人に直接苦情を言わず、必ず管理人を通す決まりになっていたのである。  そんな中、月に1、2回の割合で苦情が寄せられる部屋があった。  504号室である。  とにかく音がうるさいのだという。両隣と真下の住人は、時折聞こえてくる走り回る物音や叫び声に辟易していた。  隣室である505号室の住人は特に神経質で「解決できないのなら、ここを出ていく!」と吉木さんに詰め寄ってくることもあった。  しかしである。吉木さんが注意をしようと思い、504号室のチャイムを鳴らしても、いつも無反応なのである。人が住んでいる気配が感じられないのだった。  吉木さんはこの「504号室問題」にずっと頭を悩ませてきたのだった。
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