検証

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 お前が東京に行っちまった後、俺と吉沢と加藤で、よくつるんで遊んでたんだよ。特に目新しいこともなくダラダラ過ごしていたんだが、ある晩、加藤が酔っぱらった勢いで「よし、あの廃病院の秘密を俺が暴いてやる!」とか言いだしたんだ。その時は、俺も吉沢も完全にジョーク扱いで「おー、ここに勇者が現れたぞ!」「健闘を祈る!骨は拾ってやるぞ!」とか囃し立てた。なにしろ、ベタな冗談くらいにしか思ってない話だから、俺も吉沢も、当然真面目に考えちゃいなかった。単なる酒の上でのジョークだと思ってたし、今から一緒に行こうかなんて話にもならなかった。そもそも病院から離れた場所で飲んでて、その場に車も無かったし、飲んじまったら暫く運転も出来ないしな。その場はそのまま馬鹿話して終わった。  そしたら、その次の日の夜中、加藤からラインが入った。あいつ本当に行ったんだよ。薄汚れた手術室の壁に、太い赤マジックであいつの名前が書かれていて、ご丁寧にそれをバックにドヤ顔で自撮りしてやがった。その時は実行した加藤の好奇心というか、物好きさに思わず笑っちまったよ。俺も吉沢も「お前、どんだけヒマなんだ!」「勇者、字が汚ない!」とか茶化していた。  その三日後、あいつは死んだ。  自宅近くのコンビニから出て来たと思ったら、そのまま信号無視で道路を渡り始めて、走って来たトラックに轢かれたんだ。運転手はブレーキを踏んだが、間に合わなかった。歩きスマホしながらコンビニを出て来たという目撃証言もあって、主な原因はあいつの不注意ということになった。  それから一週間ほど経った後、今度は吉沢が同じことをすると言い出した。 「加藤は歩きスマホのせいで事故にあったという話になったけど、本当にそうか。もしあいつが死んだのが呪いのせいだと証明されたら、少なくともあいつの名誉を回復することになるじゃないか」とか、妙な理屈をこねだしたんだ。     
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